NICHIKA

ワイヤーカットの請負専門の、東大阪の加工屋です

ワイヤーカットとは(原理・精度)

放電加工の一種です。
放電加工とは、加工機に取り付けた電極と材料の間に電圧をかけて、瞬間的に放電を起こし、その熱で材料を熔かし加工するというものです。
このときの温度は7000度前後にも達します。(たとえば、鉄の融点が約1500度です)
従って、刃物で切削するのとは違い、材料の硬さに関係なく加工が可能です。
電極にワイヤーを使います。
一般的な放電加工(型彫放電)の場合は、加工する形状に合わせて電極を製作する必要がありますが、ワイヤーカットの場合は、細いワイヤー1本を電極とし、自由に材料をくり抜いて加工します。
水中で加工します。
加工液として、脱イオン水(純水)で加工槽を満たし、その中に材料を漬けて加工します。
加工液には多くの役割がありますが、主には材料と電極間の絶縁のためです。
加工液は常時ユニットクーラーを循環し、液温を一定に保つことで材料のわずかな膨張・収縮も阻止します。
放電は極短時間のため、発生する熱は瞬時に加工液で冷却され、材料が高温になることはありません。
非接触加工です。
放電による加工なので、加工中、ワイヤーは材料に接触していません。非接触のため、加工中に材料に力が加わらないことが、他の加工法と大きく違う点です。
高精度です。
放電量は、多くのパラメータによって、0.001mm単位で精密に制御されています。
加工により電極も消耗しますが、ワイヤーカットの場合は、常に新しいワイヤーが送り出されるため、消耗による寸法の変化はわずかです。
加えて、非接触であることや、加工中の熱変形がないことも、高精度加工に寄与しています。
ワイヤー加工機の進歩した昨今では、精度的にジグ研や平面研削に迫りつつあります。
取り代が微小です。
加工によって材料から失われるのは、ワイヤーが通過したコンマ数ミリ幅の溝の部分だけになります。
このことを利用して、材料をムダなく使うことができます。金型製作におけるパンチ&ダイ両取などはその代表的なものです。
平面加工です。
ワイヤーは垂直に張られており、材料に対しXY方向に動かして加工します。ちょうど糸鋸の加工と同様です。
従って、水平方向の加工はできません。水平方向を加工する場合は、材料自体を横倒しにして固定し、垂直方向として加工します。
ワイヤーを張った状態で加工するため、垂直方向にRや段差をつけることも不可能です。
※ワイヤーを傾けること(テーパー加工)は可能です。ただし、限界があります。
加工に時間がかかります。
精度の高い反面、加工速度は通常1分間に数ミリという遅さで、肉眼では動いているのがわからないほどです。
また、単純な加工でも、毎回NCプログラムを作成し、材料の寸法・形状・材質等により最適な加工条件を選別する必要があります。

加工上の特性(他の加工法との違い)

上下から保持できません。
材料の上下をアームが通るため、上面・下面で固定する爪や治具は取り付けられません。
通常は、材料のふちをテーブルに載せて固定します。材料が安定するように、隣り合った2辺を載せるのが基本です。
そのため、材料のふちには、20mm前後の押さえしろが必要です。
押さえしろは、加工精度にも影響しますので、できれば事前にご相談下さい。
小さな材料の場合は、左右からバイスで挟んで固定することもできます。
取りしろが必要です。
糸鋸と同様「切る」加工であり、端面を「削る」のには向いていません。取りしろが2mm以上ないと、加工液が逃げてしまい、安定した加工ができません。
もし加工途中に取りしろのない部分があり、材料の縁が切れると、落下し加工物や加工機を損傷する危険がありますので、加工機を停止して取り除く必要があります。何回も縁が切れる加工では、加工時間も加工費も余分にかかってしまいます。
(研磨のように、わずかな量を削る加工は可能です)
荒取りについて。
ワイヤーは「切る」機械ですので、加工時間や加工費は、取りしろの量とはほとんど関係ありません。取りしろを減らそうと荒取りしていただいても、ワイヤー加工費は変わりません。(むしろ、取りしろが少なすぎると、上の項のような問題が生じます)
一方、内部応力を開放するために、荒取りが必要なことがあります。この場合は、事前にご相談させていただきます。
一律のお見積が不可能です。
材料の寸法・形状・材質・保持方法等によって、加工条件が複雑に変化しますので、図面を拝見しないと、お見積ができません。
「厚み×加工距離」が加工費の基準にはなりますが、そのままですと、たとえば厚み300mmの材料の加工費は高額になり過ぎますし、厚み0.03mmの材料の加工費はタダ同然となり、実態とかけ離れてしまいます。
加工時間を基準にしてお見積する方法もありますが、旧式の加工機と最新の加工機では、加工速度が倍以上違うため「古い機械を使うほど加工費が高くなる」という結果になってしまいます。また、材料の保持方法の違いや、適切な加工条件を使用するかどうかでも、加工時間は倍以上変化します。この場合は「技術や経験がないほど加工費が高くなる」という結果になってしまい、やはり不適切です。
セカンドカット法
マシニング等の加工では、加工途中で何度も工具を変えるのが普通ですが、ワイヤーカットは、原則的に1本のワイヤー(電極)で加工を完了します。
電極を変えずに精度や面粗度を上げるためには、セカンドカット法を使います。これは、同じ場所を何度か加工する方法です。
1度めは最大のパワーで切断し、2度目以降は切断面を少しずつ仕上げて行くイメージです。この際、回数を増やすごとに加工パワーを落とし、その度に精度や面粗度が向上します。砥石の番手を上げていくのと似ているかも知れません。
セカンドカット法と呼んでいますが、実際には2nd、3rd~8thぐらいまでは使用することがあります。
熟練だけでは・・・
ワイヤー加工は、比較的歴史が新しいこともあり、加工機の進歩が非常に急速です。
10年も経つと、精度や加工速度、それに操作法も大きく変わり、装備される機能や設定するパラメータも、増える一方です。
1台の機械を何十年も大事に使い、操作に熟練しても、最新の加工機には、精度も速度も全く及ばないのが実情です。
ノウハウの蓄積や加工方法の熟練は大事ですが、それと共に、新しい操作法や、どんどん増えて行く機能をマスターすることが不可欠な分野であるといえます。
可能な限り、定期的に設備を更新することも必要です。